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「狭いな。」

まるで、初めて手にした道具の使い勝手を確かめるように王は呟いた。

キラへの気遣いなどあったものではなく、王は突き込んだ指を更に深く抉る。

「・・・っ・・・・・ぐ・・・・・・」

今まで経験したことの無い類の痛みと感覚に、キラは硬直し抑えきれない叫びの一端を咽喉から漏らす。

ざわりと髪は逆立ち、女のように滑らかな肌は粟立ってじっとりと脂汗に濡れた。

「力を抜け。でなければつらいのはお前だぞ。」

初めてキラが見せた狼狽を気にも留めず、苦痛を与えているのは自分でありながら全く他人事のような口調。王は指を更に増やして頑なに閉ざされたその場所を強引にこじ開ける。

一方のキラは、王の台詞、命令にただ困惑していた。

なにせ、男に身体を開かれるなど初めてのことで、ましてやこれは自然の摂理に反した行為だ。

選択の余地もなく性の捌け口としての扱いを甘受してはいるものの、どうしたって生理的嫌悪と危機感を覚えれば本能的に身体は身構えてしまう。

深呼吸をしようにも、不自然に呼吸は引き攣り、王の暴虐な指に息は詰まる。

更に、時折深く呑み込ませた指が、男にとって抗えぬ快楽を産む場所へと触れるたびにキラの身体が明らかに痛みではない感覚にビクリと震える。

それに気づかない訳は無いが、王は特にその部位を攻める事無く、苦しげなキラの表情を見下ろし薄く笑いながら、淡々と自分の思うままにキラの身体を開いていった。

王にとってこれは己が快楽を楽しむためのものではなく、ただキラを屈服させ屈辱を刷り込むことそのものが目的であるかのように。

「・・・こんなものか。」

独り言のような台詞と共に、キラを犯していた王の指が引き抜かれた。

「・・・・は・・ぁ・・・・・・・」

それが僅かな、更なる悪夢の前の一瞬であることはわかっていたが、キラはたとえようの無い圧迫感から開放され詰めていた息を深く吐き出した。

皮肉にもその一瞬、キラの身体が緊張から開放され弛緩する。

その一瞬を王は見逃さず、王はキラの両膝裏を掬い大きく広げ、つま先がベッドにつく程に深く体を二つに折り曲げた。

「ぐっ・・・!」

かなり無茶な体勢だが、長年鍛えられたしなやかなキラの若い身体は、苦しいながらもその無理を受け入れる。

その体勢は、王の目の前に蹂躙されたキラの秘所を晒すものだ。視覚的にも屈辱を煽るこの体勢。

わき腹の傷が開いて包帯じっとりとぬめりを帯びるのを、キラは肌で感じた。折角ニコルが手当てをしてくれたものだが、その主君の無体が原因なのだから申し訳なく思う必要は無いだろう。

むしろ、失血で意識を失えるのならその方がありがたい。

「さあ、覚悟はいいか?」

満足に息が出来ぬキラを、反応をうかがうように動きを止め皮肉な笑みを浮かべ見下ろしてくる緑。

キラは陵辱者を真っ向から見据え、苦しい体勢の為に潰れた声ながらもはっきりと言った。

「どうぞ、お好きなように。」

「青くなって震え泣くかと思ったが、思ったより粘る。」

「・・・それをお望みでしたら、そうするよう努力いたしますが。」

キラは挑発に挑発で返す。

その分のリスクが跳ね返ることは承知しているが、キラには今以上の”最悪の事態”は中々想像に難かった。

が、キラの反発は王にとっては不愉快ではなかったらしく、むしろ楽しげに肩を揺すり、強引にシーツへと押し付けたキラの片膝裏を抱える。

蹂躙され未だ違和感の残るキラの秘所へと押し付けられたモノは生々しく熱く、王の興奮をキラに教えた。

「むしろ、そうならないことを望むな。」

そして、更にキラが無理を推してその王の台詞に言葉を返そうとした瞬間。

言葉を発そうと力が抜けたその僅かな瞬間を見逃さず、王は己のいきり立ったものを突き入れた。

「―――――――――――     !!」

指で体を開かれた時とは比べ物にならない痛みがキラの脳髄を占拠する。

反射的に暴れようとした体を王は容易く押さえつけ、容赦なく腰を押し付け男を受け入れるべきではないその部位を蹂躙した。

刃で切り裂かれるものとは違う、身の内を侵され裂かれる痛みと恐怖。それはキラの想像を超えていた。

キラはついに、声にならない絶叫を上げた。